宇宙人の存在は信じるが、彼らと接触することはないと思う理由

May 14, 2021

thought
article cover
Image by Pawel Czerwinski

元々宇宙人の存在は全力で信じている。
この宇宙の広さを考えたとき、いない方が不自然と言える。
それにもしこの無限とも言える広大な宇宙の中で、塵にも満たない小さな太陽系の地球という惑星にしか生命体がいないのなら悲しすぎるし、心底ゾッとする。

では宇宙人がいるならなぜ会いにこないのか?という、タイムマシンがあるならなぜ未来人が来ないのか?に近いようで近くない疑問がある。
そもそも会いに行く技術の無い文明が、宇宙人がいるならなぜ会いにこないのか?というのは少し滑稽な気はするが、個人的には他の星の知的生命体と接触することはほぼありえないと思うし、 その日が来たとしてもあまり良い出来事ではないと思う。

その考えは、 Kurzgesagt という科学的なトピックを可愛らしいアニメーションで解説しているYoutubeチャンネルの、この動画に出会ったことで確信に変わった。

膨大な時間と広大な空間

宇宙は観測可能な範囲だけでも、おそよ130億歳2兆個の銀河と200垓(2×1023)個の星があると考えられている。太陽系が所属する銀河だけでも、地球のような生命に適した惑星は400億個も存在するといわれている。

130億年という時間を横軸として、地球人の文明をグラフに表示すれば恐らく短すぎて目に見えない。

どんな文明もいずれ滅びると仮定した時、このとてつもない長い時間の中で一瞬の火花のようなそれぞれの文明が、ちょうと同じタイミングで宇宙に存在していなければならない。
それだけでも気の遠くなるような確率に思えるが、その上でこの広大な宇宙の中から相手の存在を発見する必要がある。

縦が宇宙空間の広さとその中での観測範囲/活動範囲、横が時間を表すグラフがあったとして、一つの文明はこのような形で表されることになる。

graph

そして、この形が他の形と重なったとき、文明同士の接触といえる。

graph

ただ、130億年という横軸と宇宙の広さという縦軸をもつグラフの中で、どの文明も点以下にしか見えないはず。つまりこの大きなグラフの中で、運良く点と点が当たったときだけ、宇宙人との接触がおこることになる。ましてや「あなた」の生きる短い100年の中で接触が起きる確率は絶望的に低い。

graph

これだけでも十分に宇宙人との接触はないと思わせられるが、もう一つ大きな要素がある。

文明レベル

カルダシェフ・スケール と呼ばれる文明のレベルを示すスケールがある。
文明の進歩は、「環境からどれだけのエネルギーを取り出しているか」「取り出したエネルギーをどのように使っているか」の2点からかなり正確に算定することが可能という考えに基づいている。
惑星が違えど、物理法則は不変である以上、このスケールで他の文明を考察しても問題ないと言える。

元のカルダシェフスケールに1つ加えられ、4つの区分がある。

タイプ1: 自分が居住する惑星のエネルギーを全て利用できる文明。

タイプ2: 自分の惑星だけでなく、自分の惑星系のエネルギーを利用できる文明。

タイプ3: 自分の所属する銀河のエネルギーを利用できる文明。

タイプ4: 複数の銀河のエネルギーを利用できる文明。

地球人の扱うエネルギーは1800年と2015年を比較すると25倍になっており、今後も指数関数的に増加すると考えられる。 ただ、見てわかる通り、地球の文明はまだタイプ1にも達していない。

タイプ1未満の文明は、我々の銀河の中に他にも多数存在すると考えられてる。
例えば地球の文明は他の文明を探すために電波を送信しているが、電波が届く範囲はおよそ直径30光年ほどで、銀河の10万光年という直径から考えれば、いかにわずかな範囲にしか届いていないかがわかる。
仮に電波の届く範囲が200光年を超えたとしても、その電波は減衰してノイズだらけになっており、もし他の文明が受信しても、それが別の文明から発信されたものとはわからない可能性が高い。

type1

タイプ2の文明は自分の惑星以外にも進出し、他の惑星の植民地化やテラフォーミングを行うと考えられている。 恒星の発生するエネルギーを全て利用する手段を発明している可能性が高く、もし実現している場合は実質的に無限大のエネルギーを扱うことができる。

タイプ3になると、もはや地球文明には想像することも難しい。 タイプ3は人類が発見していない物理法則やダークマターのコントロール方法、光よりも速く移動する方法を発見しているかもしれないし、我々はその原動力となるテクノロジーや行動を理解することすら困難である可能性が高い。 言うまでもなく、ここまでくると今の我々にとって、神にも等しい存在であり、逆に向こうからすれば我々は我々にとっての蟻以下に等しい存在になる。

type3

地球文明に接触してくるとすればタイプ2以上のため、いわゆる「ワレワレハ、ウチュウジンダ」みたいな感じの接触はありえないだろうし、 タイプ3に近い文明なら人類は思慮にも値しない存在に違いない。
キューブリックの「Space odyssey」のように高度な文明が人類の進歩の手助けをしてくれるなら有難いが、それは宇宙人を信じていない人が信じている人にナンセンスだと思う以上のナンセンスだろう。


Profile picture

元カメラマン。今はベルリンで働くWEBエンジニア。
スロバキア人の妻とドイツ猫二匹の多国籍家族。